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「帰郷」

​1980年の1月に結婚。新婚旅行は津軽でした。津軽からの帰路、生まれ故郷の福島県いわき市の実家に立ち寄り、そして駅ひとつ隔てた叔母の住む北茨城市の小さな漁村・大津港も撮影がてら訪れました。

以来その年の夏と次の年の夏、三度の帰省した折に撮影した一部がこれらの写真です。三度目の帰省には一月に生まれた長女あかりも一緒でした。
しかし、いまこれらの風景はありません。三十年の時がそうさせたのでは無く、大きな地震と大きな津波と原発が人々の暮らしや風景を一変させたのです。
私は遠く離れた地で呆然と立ち尽くすだけの傍観者のひとりにすぎない存在になりました。
何でも無いこれらの写真を何でも無く懐かしむ、そんな遠く離れた地での小さい感傷や思いさえも私の心にはもはや存在しません。故郷が消えたのだと思いました。  

                        −2011年夏ー

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