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the situation3

  「角を曲がれば」

 衝動と理性の間を行ったり来たりする。

 街を撮るとき、なるべく衝動や気配にまかせてシャッターを切っている。
  理性に支配された意味が発揮されるのは、自分が撮った写真を何らかの意図を持ってまとめあげ作品化するときであり、 もっと先の話である。
 私はカメラを仲立ちとして街を体現する。幸せなことだ。別な言い方をするとカメラ無しでは街はあまりにも漠然として 捉えようが無く大きな混沌としか映らない。 立ちはだかる街の圧倒的な有り様に対峙するにはカメラという武器が私に は必要不可欠であり街をイメージする拠り所である。
 幸運にも私はこの歳になってもカメラを杖代わりに街を徘徊することが出来る。
 住む街の同じ場所や同じ道を行ったり来たり。当然同じ風景の繰り返しである。
 しかし同じ場所、同じ道であっても、いつものそのちょっと先の角を曲がれば、何かしら面白い出会いや風景が必ず目の 前に現れる。そんなとき躊躇せずに気配や衝動に任せてシャッターを切れるかどうかが写真家としての醍醐味であり、自 ずと心拍数も上がりワクワクもする。生きている証なのだ。
 今日もまたそんな出会いを期待しながら、そのちょっと先の角を曲がる。

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